新・前川國男自邸
新・前川國男自邸
「新・前川國男自邸」は、建築家・前川國男(1905〜1986)が1974年に建てた終の住処である。現在は東京都の江戸東京たてもの園に移築され公開されている旧自邸と同じ品川区上大崎に建てられた。前川國男のもとで建築家として修行を積んだ建築史家の松隈洋氏は、新・前川國男自邸について次のように述べている。
「新自邸の設計を担当した所員の証言によれば、70歳を目前に、前川は、年の離れた美代婦人に安心して暮らすことができる住まいを残したいと願い、耐震性も考慮して鉄筋コンクリートによる改築を決意したという。こうして新自邸は旧自邸の4.5倍もの延床面積をもち、地下1階、地上2階の堂々とした邸宅として完成する。けれども、1階の居間を中心とする大らかな空間構成や内部と庭の連続性などの特徴は、ほぼ旧邸をそのまま踏襲する形となっているのである。」
新・前川國男自邸は、美術館などの公共建築やオフィスビルなどを多く手がけた前川國男が設計した数少ない住宅建築であり、現存する唯一の鉄筋コンクリート造の住宅建築である。また、前川國男という20世紀を代表する建築家の自邸という点で、日本の近現代建築史においてきわめて重要な住宅遺産といえる。
一時期その存続が危ぶまれたが、2008年にこの建物の建築的価値を理解する所有者に継承され、以後、有限会社コミュニティー・ハウジングで賃貸住宅として管理している。2025年8月から2026年3月にかけて、株式会社前川建築設計事務所の監修のもと、清水建設株式会社と株式会社大原工務所により大規模改修工事が実施された。
将来的な文化財登録を目指し、大規模修繕においては、内外装ともに可能な限りオリジナルの仕上げを残す、またはオリジナルの意匠に戻す方針を決定。一方、築後50年を超えていることから、設備(電気、給排水、給排水設備、通信等)は最新のものに更新し、今日的な快適性を確保している。また、南側と北側の庭についても、この度の大規模回収を機に有限会社西海園芸(山口陽介)の設計・施工によりリニューアルされた。
敷地面積:459.27m2
延床面積:456.85m2
用: 個人住宅
設計:前川建築設計事務所
施工: 清水建設
竣工:1974
用途: 賃貸住宅
大規模修繕工事:
企画:有限会社コミュニティー・ハウジング
監修:前川建築設計事務所
施工:清水建設、大原工務所
竣工:2026年3月
写真: ©齋藤さだむ